2010年9月4日土曜日

Der Kontrabass、音楽の基礎



このあたりで気になっていた本ですが

面白そうなので、買って読んでみました

書評などありますが

『香水』で有名なパトリック・ズュースキントのデビュー作品。一人芝居用の台本として1980年に書かれ、1981年ミュンヘンのキュヴィエ劇場で初演。成功を収めたそうだ。

ストーリーはうだつのあがらないコントラバス奏者の愚痴にも似たモノローグ。オーケストラの中でいつも「縁の下の力持ち」だけで終わってしまう男性コントラバス奏者の悲哀、それをユーモアとペーソスで包み、なんとも言えない雰囲気に満たされている。「感動」というとちょっと大袈裟になってしまうけど、それに近い味わいがする。最後の方ではなんだかジーンときた。うん、いい話だ。(一箇所侮蔑的な言葉があったが)

まずコントラバスのオーケストラ中での「虐げられた」状況から。コントラバスにはヴァイオリンやフルートのように綺麗な旋律はまず回ってこない。トランペットやティンパニ奏者のような英雄的な場面もない。何より(ソロ)コントラバスの音楽──有名な作曲者が書いた──はほとんどないのだ。
なぜって、まともな作曲家がコントラバスのために曲なんか書くもんですか。もし書いたとしても、それはたちの悪い冗談からですよ。モーツァルトに小さなメヌエットがありますよね。ケッヘル番号344のやつ。あれなんか滅茶苦茶ふざけてるじゃないですか。サン・サーンスの『動物の謝肉祭』の中の『象』にしたってそうです。コントラバス独奏が、アレグレット・ポンポーソで一分半つづくんですけど、笑い死にするんじゃないかと思いますよ。かと思うとリヒャルト・シュトラウスのオペラ『サロメ』の中で、サロメが井戸の中を覗いている場面にあらわれる五小節のコントラバス・パッセージみたいなやつ。サロメが、「この下はなんて暗いんでしょう! こんな暗い穴の中に閉じ込められるなんて、どんなに恐ろしいことでしょう。まるで墓穴のようね……」と歌うくだり。ほんとうにゾーっときます。
 ─ p.58
そして彼、コントラバス奏者の身の上話になる。彼は演奏会で共演しているソプラノ歌手に恋をしている。しかし、彼女は地味なコントラバス奏者なんか目もくれない。彼はイジケル。だからいろいろ省察してみる。彼女のこと。自分が所属している国立管弦楽団のこと。音楽のこと。作曲家のこと。ドイツのこと。ナチス時代のこと。そして自分のこと……。
ナチズムと音楽──ま、フルトヴェングラーの書いたものを読んだら分かると思いますが──ナチズムと音楽は、絶対に相いれるもんじゃないんです。絶対に。(中略)フランス人たちは、占領下のパリでカラヤンに喝采を送りましたよ。その一方で、ぼくの知るかぎりじゃ、強制収容所の囚人たちも、自分たちのオケを持っていたというじゃないですか。その少し後では、連合軍の捕虜収容所のわがドイツ人たちも。なんていったって音楽というのは、人間的なもんですからね。政治とか現代史の彼方にある、普遍的、人間的ななにか、あえていわせてもらうと、人間の魂と精神を構成する先天的な要素なんですよ。
 ─ p.67-68
彼は国立管弦楽団に所属している。身分は公務員だ。華麗なるソリストや演出家、指揮者とは違うけど、とりあえず(安月給であるが)給料はもらえる。失業は心配ない。でも、そういった「保証」ある生活にひどく不安を覚える。自由がない。夢を失っていまうのでは、と。

夢。コントラバス奏者にとって「憧れの音楽」が一曲ある。たった一曲だ。有名な作曲家が書いた名曲中の名曲。コントラバスの美しい旋律がある曲。
シューベルトの五重奏曲『鱒』。
その曲をいつか弾きたい、と夢をみながらも、彼はまた平凡で地味な「仕事」へと向かう。



かなり面白いんですが、コントラバス弾きにしかわからないカモ、、、、

作者はPatrick Süskind

ピアノは弾くがコントラバスは弾かないようです

きっと知っているコントラバス弾きに、こういう人がいたんでしょうねー

もともとは戯曲らしいんですが、YouTubeにアップされていたりします(ドイツ語ですが、、、)



アマゾンでは購入者が、一緒に買っている本は

音楽の基礎 (岩波新書) [新書] 芥川 也寸志 (著)

、、、で、ついでに(失礼)買ってみました

日本を代表する作曲家、芥川也寸志が著した名著。新書という限られた紙数の中で、正に音楽の基礎となるリズム、ハーモニー等に関することから刊行当時の最先端の音楽まで、様々な文献、データを引用しながら的を得た説明がなされており、例えば音大に進学を考えているような方や少し音楽を理論的に聞いてみたい、学んでみたいと考えておられる方には有用と思います。必要以上に難しい言葉は使わず、それでいて高度な内容までを扱っているあたり、常々「音楽はみんなのもの」と語っていた芥川の面目躍如、渾身の一冊と言っても過言ではないでしょう。

こちらは、かなり硬い(でも勉強にはなる)

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